昨日、真言宗教津会の「宗祖弘法大師誕生会」(たんじょうえ)が下大井の保安寺で開催されました。この法要は宝亀5年(774年)6月15日にお生まれになった真言宗の宗祖弘法大師空海の誕生を祝い、私たち自身がお大師さまの教えに感謝する法要です。法要では祭文(さいもん)というお大師さまの功績を称える経文を声高らかにお唱えし、甘茶を注いで手を合わせます。弘法大師は遣唐使として唐に渡り、恵果阿闍梨から真言の神髄を伝授されました。数多の弟子の中からただひとり、真言のすべてを授かった空海は日本に戻って真言宗を開かれました。それから1200年以上たった今も、空海が嵯峨天皇から下賜された本山の東寺(教王護国寺)は伽藍を保ち、講堂の立体曼荼羅は私たちに空海の教えを語りかけ続けています。数あるお大師さまの教えの中で、拙僧のような者でも素晴らしいな、と思う言葉があります。「即身成仏」という言葉、お聞きになったことがある方も多いことでしょう。あなた自身がありのままのその姿で仏さまになれるというのです。私たちにはいろいろな側面があります。喜怒哀楽、感情と共に心は揺れ動き、月のように満ちたり欠けたりするものです。しかしながら、仕事に真剣に取り組んで何かを生み出しているとき、子や孫、あるいは動物や花を慈しみ、その美しさを感じている刹那に、自分でも気づかないうちに仏さまのようになっている、そんな時があるのではないでしょうか。その瞬間を感じて、また、感じることができるようになるように、精一杯生きてみなさい。お大師さまはそうおっしゃっているような気がするのであります。